【レポート】沖縄県 恩納村のモズク・サンゴ養殖の現場を訪問
2024年7月11日、UMITO Partners 事業開発・営業部の岩本と横田が、沖縄県恩納村でモズク養殖とサンゴの保全活動を行う金城勝さん(恩納村漁協)の漁場を訪問しました。
恩納村のモズク養殖
恩納村漁業協同組合(以下、恩納村漁協)ではモズク、アーサ、海ぶどうなどの海藻養殖を中心に「つくり育てる漁業」を推進し、沖縄県内でも高い養殖技術を誇る産地として知られています。
特に、1977年には沖縄県内で初めてモズクの養殖に成功し、「中間育成方式」と呼ばれる技術は、沖縄全体のモズク養殖産業の発展に大きく貢献しています。 また、海ぶどうの陸上養殖技術を確立し、沖縄県の重要な特産品へと成長させました。
環境への取り組み
恩納村漁協は、美しい沖縄の海を未来に残すため、サンゴ礁の保全・再生活動に力を入れています。1998年からサンゴの養殖と植え付けを継続しており、約2万4千群体のサンゴからの産卵数が年間約57億個見込まれるまでに成長(*1)し、同時に魚たちの棲み家を広げています。また、サンゴによる栄養塩の供給が、モズクの生育にも重要であるとされており、モズク養殖にとっても重要な生態系です。また、サンゴを捕食するオニヒトデの個体数管理では、沖縄科学技術大学院大学(OIST)とも研究協力し手作業で駆除し、サンゴの健康を守っています。さらに、赤土流出防止のための植樹や農地管理にも取り組み、透明度の高い海を維持しています。
これらの活動は高く評価され、2011年には海ぶどうの養殖技術で天皇杯(平成23年度農林水産祭天皇杯水産部門)を受賞、2018年には日本サンゴ礁学会の論文賞、2019年には第12回海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣表彰)を受賞しました。直近では、2024年に第29回全国青年・女性漁業者交流大会において、多面的機能・環境保全部門で農林水産大臣賞を受賞するなど、地域の環境・生態系に配慮した海藻養殖の推進やサンゴ礁保全活動の成果が高く評価されています。
視察にあたって
今回の視察では、実際に海に潜ってサンゴの雑養殖を行う現場を見せていただきました。恩納村は、沖縄でも有数のリゾート地で、リゾートホテルが海沿いに多く立ち並び、それぞれのプライベートビーチで観光客がマリンレジャーを楽しむエリアです。透明度の高い海でたくさんの海の生き物と出会うことができる「青の洞窟」などでのシュノーケリングやダイビングはとても人気です。観光開発や、利用により、過去には人間の活動による環境に負荷がかかることもありましたが、恩納村漁協の漁業者たちの保全の努力により、観光業と海の豊かさ、漁業が共存しています。金城さんの漁場も、リゾートホテルのプライベートビーチの目の前でした。金城さんのような漁業者がホテルと連携してレジャーボートの操業も担うことで、観光客が遊覧やシュノーケリング、遊漁などで漁場やサンゴの保全海域に立ち入ることも防がれています。結果として海の豊かさが守られ、それがまた観光資源となり地域経済を潤すという良い循環が生まれていました。海の中では、大切に育てられたサンゴが育ち、その周りにたくさんのカラフルな魚たちが元気に泳いでいました。漁協や漁業者と、科学者・専門家の協力体制も厚く、今回の視察でも恩納村漁協の養殖モズクの流通とサンゴ保全の関係などについて研究されている大元鈴子さん(鳥取大学 地域学部 准教授)が同行くださいました。こうした様々なステークホルダーと協力・協働しながら「ウミとヒトのポジティブな関係」を体現する恩納村漁協の取り組みは、日本の他の地域にとってもヒントになる点が盛りだくさんでした。
大元さんと金城さんなどによるの恩納村漁協のモズク商品によるサンゴ保全に関する研究論文(英語)はこちら:
Omoto R, Uehara M, Seki D, Kinjo M. Supply Chain-Based Coral Conservation: The Case of Mozuku Seaweed Farming in Onna Village, Okinawa. Sustainability. 2024; 16(7):2713. https://doi.org/10.3390/su16072713
*1: 比嘉 他 (2017) 「漁協によるサンゴ再生の取り組み〜沖縄県恩納村での事例〜」
お気軽に
お問い合わせください
ネイチャーポジティブやブルーカーボン、洋上風力における漁村振興やサステナブルシーフードにおける
取組、講演・登壇など、SDGs(目標14:海の豊かさを守ろう)に貢献されたい方は
以下フォームにてお気軽にお問い合わせください。