海の回復と産業の成長を、同時に実現する【後編】

―海洋インパクトファンド Blue Frontier Fund[BFF]が目指す
新たな経済モデル「ニュー・ブルー・エコノミー」とは

Beyond Impact サガール・タントン × UMITO Partners 村上春二

Beyond Impact サガール・タントン
×
UMITO Partners 村上春二

2026/05/28
Text : Eri Ishida
読了時間 : 約9分

前編はこちら

前編では、Beyond ImpactとUMITO Partnersがなぜ海洋特化型インパクトファンド「Blue Frontier Fund[BFF]」を企画するに至ったのか、その思想と哲学を語り合いました。後編では、BFFが注目する技術・投資領域の詳細、エグジット戦略、日本市場の可能性、そしてBFFが掲げる新たな経済モデル「ニュー・ブルー・エコノミー」の具体的なビジョンへと踏み込んでいきます。

気づいたら、ポートフォリオの6社がブルーだった
—インパクト投資が海へと向かう必然

―後編では、「Blue Frontier Fund[BFF]」が掲げる「ニュー・ブルー・エコノミー」の具体的なビジョン、注目する技術や投資領域について踏み込んでいきます。
前編では、Beyond Impactはスタート当初から「海」に特化したファンドだったわけではないとお話しされていました。それがなぜ近年、ブルーエコノミーに着目するようになったのでしょうか。

サガール・タントン(以下、サガール):お話しした通り、当初、私たちの投資戦略にブルーエコノミーは組み込まれていませんでした。それが、ある時点でポートフォリオを見直してみると、すでに6社がブルー・バイオエコノミーの領域で事業を展開していることに気づいたのです。ある企業は微細藻類(マイクロアルジー)[1]を扱い、また別の企業は藍藻や海洋細菌を活用していました。植物由来シーフードや培養シーフードを開発しようとしている企業もあれば、海藻や微細藻類由来のバイオベース原料を開発している企業もありました。

これをきっかけに、私たちは海洋分野をより深く掘り下げて見るようになったのです。そこで明らかになったのは、「ブルー(海)なくしてグリーン(陸)は成り立たず、グリーンなくしてブルーも成り立たない」という事実です。陸上の生命、海中の生命、気候システムは、相互に深く結びついており、これらを切り離して考えること自体がもはや現実的ではありません。

村上春二(以下、村上): 私たちもUMITO Partnersの活動を通じて海を俯瞰するほど、課題が相互に複雑に絡み合っていることが見えてきました。海水温上昇、水質の悪化、生態系の劣化、生物多様性の減少——これらはすべて構造的な問題と繋がっています。

サガール: 同時に、あることにも気づきました。森林・陸上生物多様性・脱炭素といったテーマと比べると、海は気候変動の課題において非常に重要な領域であるにもかかわらず、圧倒的に注目度が低いのです。この偏りは、資本の流れにもはっきりと表れていました。植物由来の代替ミートを開発する企業はすでに商業化が進み、多額の投資を集めていましたが、植物由来シーフードや代替シーフードを開発する企業が得られていた投資額は、はるかに少なかった。

村上:その理由は何だと思われましたか?

サガール:単純に難易度が違うからだと思いました。たとえば、培養技術ひとつとっても、牛由来の細胞を使った培養肉を開発するよりも、複雑な海洋生物を対象とした培養シーフード[2]を開発する方が、科学的にも格段に難しいのです。高度な科学技術が必要であるがゆえにイノベーションが遅れ、資本も集めづらい。その結果として、世界の何十億人もの人々が依存している海洋フードシステムの脆弱化を招いてしまいました。しかし、私たちはこの「難しさ」こそが好機であると考えています。このテーマにいち早く、真摯に取り組んだプレイヤーが、次世代の海洋フードシステムをリードする存在になれるからです。

実際、私たちはこのフロンティアを、まだほとんど探索できていません。たとえば、微細藻類や海藻は、汎用性とサステナビリティの高さがあるにもかかわらず、現時点ではそのポテンシャルが未だ引き出されていない資源です。なおかつ、世界を見渡すと、海藻をほとんど食べることもなく、産業的に活用することもない国が数多く存在しているのです。

コモディティではなくソリューション—Beyond Impactの投資体制

村上: Beyond Impactは現在、どのような運用体制で投資を行っているのでしょうか。また、どのような領域へ投資しているのか教えていただけますか。

サガール: 現在、Beyondグループ全体では複数の投資ビークルを運用しています。Beyond Investingの枠組みでETFを運用しており、これが約1億3,300万ドル規模に成長しています。一方でBeyond Impactは、インパクトVCに特化したファンドとして独立して運用しており、VCサイドでは3つのアクティブなビークルがあります。ETFとVCファンドを合わせた運用資産総額は1億6,000万米ドル超です。

前編でお話しした通り、私たちの投資哲学はKinder・Cleaner・Healthierの3軸です。その前提のもとで、最も大きな投資領域だと見ているのが、私たちが「アドバンスト・ニュートリション」と呼んでいるバイオテック分野です。一般的な「フードテック」よりも広く、かつ高度なコンセプトで、完成品としての食品そのものよりも、その背後にある原料や製造プロセスに注目する技術です。具体的には、代替タンパク質[3]、代替脂質、フレーバー・香料・着色などに用いられる先端的なバイオ由来分子。技術面では、精密発酵[4]、細胞農業[5]、分子農業[6]、菌類・菌糸体ベースの技術など幅広い領域をカバーしています。特定の技術に固執することなく、食品・素材・医薬品など複数の分野に応用できるセクター横断型の技術を積極的に探しています。
そして、2つ目の領域はバイオマテリアル[7]です。石油由来でもなく、動物搾取にも依存しない、生分解性またはバイオベースの代替素材が対象で、プラスチック・PU・レザーなどと置き換えられる次世代素材です。3つ目はアドバンスト・ニュートリションとヘルスケア・ビューティー領域です。Beyond Impactとしては、これまでに約30社近い企業に投資してきました。

村上: 投資対象となる条件は、どのようなものですか?

サガール: 私たちが投資対象とする条件は、高い付加価値と収益性、グローバルに展開できるスケーラビリティ、そして競合が容易には追随できない高い技術的参入障壁であり、この軸は一貫しています。コモディティ価格で取引される製品への投資を行わないのは、そこにインパクトと経済リターンの間で障壁が生まれやすいからです。意味あるインパクトを持続的に生み出すには、事業としての実現可能性とインパクトの可能性が必ず両立していなければならない。

たとえば、従来の畜産肉をすべて代替タンパク質に置き換えることができれば、インパクトとしては非常に大きいですよね。しかし、現時点では価格の問題から、大規模な代替を商業的に成立させるのは簡単ではありません。だからこそ私たちは、初期段階では市場規模やインパクトが限定的に見えたとしても、長期的には指数関数的なインパクトを創出する可能性を持つ企業に注目しています。スケールと生産量が拡大するにつれてコストは大きく下がり、最終的には従来の環境負荷の高い製品と置き換えることが可能になる——このスケールの論理が、私たちの投資判断の根拠です。

さらに私たちが重視するのは、自然そのものが「多用途の循環構造」によって機能しているという視点です。精密発酵や細胞農業といった単一の技術プラットフォームから、食品用のタンパク質も医薬品・化粧品向けの原料も生産できる。特定の産業に縛られず、最も実現性の高い商業ルートから入り、そこから段階的に広げていくこのシークエンスこそが、インパクトと経済リターンの双方を加速させる鍵だと考えます。

村上: 最終的なターゲット市場に向かって、段階的にアプローチしていくという考え方ですね。その発想は、BFFの投資テーマにもつながっています。

サガール: その通りです。Beyond Impactでバイオテック、バイオマテリアル、アドバンスト・ニュートリションといった領域で培ってきた投資知見を土台に、BFFではそこに「海」という軸を加えます。核心にあるのは、何らかの形で海の回復に寄与するソリューション——あるいは微細藻類や海藻などの海洋資源を活用して既存産業を変革するソリューションです。「直接的インパクト」とは投資先の技術や製品が海洋生態系の保全に直接貢献すること、「間接的インパクト」とは陸上の食料・素材システムを変革することで海洋への負荷を間接的に減らすこと。この両方のレンズを持つことがBFFの独自性です。

―改めて、BFFの中核となる投資テーマを教えてください。

村上:ブルーフード[8]、バイオテクノロジー、そして海洋関連イノベーションにおけるB2Bソリューションの3つです。

サガール:具体的には、ディープ・バイオテック企業、バイオエコノミー関連ベンチャー、そして場合によってはマテリアルサイエンスなどの非バイオテック領域にも注目しています。精密発酵、細胞農業、分子農業、菌類・菌糸体ベースの技術など、複数の垂直領域にまたがって応用できるセクター横断型の技術を積極的に探しています。このレンズに合致しない投資は対象にはなりません。

インパクトと経済リターンの両面で目指す姿は、BFFがVCファンドとして十分に競争力のあるリターン水準を達成することです。それが実現すれば、さらなる資本を呼び込み、この分野における旗振り役としてのポジションを確立できます。BFF 2、BFF 3へとファンドを拡張し、インパクトのスケールを一層拡大していくことが私たちの目標です。

エグジットの設計—インパクトを守りながらリターンを実現する

村上: 現在運用されている既存のファンド、そして私たちが共に構想しているBFFにおいて、どのようなエグジットの形を想定していますか。

サガール: 短期的には、M&A(合併・買収)を通じたエグジットに大きな可能性があると見ています。グローバルでは、大手企業がイノベイティブなスタートアップを積極的に買収する動きが加速しており、これが最も一般的な道筋になると考えています。一方で、技術力・ブランド力・市場での規模を兼ね備えた「カテゴリーリーダー」として成長する企業も必ず出てきます。そうした企業はIPOを通じて独立した企業として成長していく道を選ぶでしょう。

一方で、私たちが常に意識しているリスクが、インパクトの希薄化(インパクト・ディリューション)[9]です。不適切なM&A取引によって、本来その企業が目指していた社会や環境へのインパクトが薄れてしまうことを指します。だからこそ、その企業のインパクトを継続・拡大してくれる適切な買い手は誰なのか、また売却後もインパクトを保証できる条件をどう設定するかについて、極めて慎重に検討しています。ファンド初期においては、M&Aによるエグジットは高いリターンの可能性を持ちながら、インパクトを意図的に守る余地も残せる現実的な選択肢です。

村上: エグジット後もインパクトが継続するかどうかという視点は、BFFにとっても重要な論点です。買い手との価値観の一致や、インパクト条項の引き継ぎをどう担保するかは、今後も一緒に設計を深めていきたい部分ですね。

採取から再生へ—BFFが描く「ニュー・ブルー・エコノミー」

サガール: 村上さんは、BFFを通じて、インパクトの観点から何を実現したいと考えていますか。

村上: インパクトとリスクの両面から俯瞰すると、現在、世界全体の温室効果ガス排出量の約26%が食料セクター由来であり、そのうち約14%は動物性タンパク質の生産に起因しています[10]。従来型のタンパク質生産から環境負荷の低い最先端の生産方法に切り替えることは、食料産業全体の温室効果ガスを大幅に削減できる可能性を秘めています。さらに、世界の海洋・淡水における富栄養化の約78%は農業に起因しており、陸上でのタンパク質生産が栄養塩の流出を通じて海洋環境を直接破壊している。だからこそ、代替的で持続可能なソリューションを前進させることが不可欠なのです。

サガール: 私たちが特に深く考えているテーマが、生物多様性の保全です。多くの種が自然の継続的な搾取によって絶滅の瀬戸際に追い込まれています。もしBFFが生物多様性の文脈でどのような影響を与えているかを定量化できれば、それは極めて大きな価値を持つでしょう。フィッシュオイルはその典型例です。サプリメントとして世界中で消費されているDHAやオメガ3は、現在そのほとんどが天然魚から採取されており、漁業資源への圧力となっています。これを新しい技術で代替できれば——この産業全体が「採取から再生へ」とディスラプトされる余地は大きい。

村上: 私たちが言う「ニュー・ブルー・エコノミー[11]」とは、まさにそのビジョンです。自然資本に負荷を与える搾取型の経済から脱却し、再生型のブルーエコノミーへと移行すること。海の生態系がより豊かになれば、水産資源は回復し、漁業者はより多くの漁獲を持続的に得られるようになる。最終的には、人間社会と自然との間に、より健全で前向きなバランスが生まれる。それはUMITO Partnersのパーパスである「ウミとヒトの関係を、ポジティブにつなぎ直す」とも完全に重なっています。

日本の3つの強みと、欧州×アジアをつなぐ
グローバル・エコシステム

―日本市場については、どのように見ていますか。そして、BFFのグローバルな役割についても聞かせてください。

サガール: 日本は、「大きな機会と現実的な課題が交差する地点」に立っていると思います。日本はしばしば「変化に抵抗する国」と言われますが、私自身の経験から言うと、あまり語られていない重要なもう一つの側面があります。

第一に、日本は先進国の中でも数少ない、国内から本気でサステナブルファイナンスを構築しようとしている市場だという点です。多くの先進国では、インパクト資本は歴史的に新興国へと外向きに流れてきました。しかし日本は違う。「日本自身がどう変革していくのか」という問いが真剣に投げかけられ始めている。これは本当にエキサイティングな転換です。

第二の機会は、日本の産業基盤です。日本のコングロマリットは、実はイノベーションの探索に非常に積極的で、食品製造分野においても極めて高度で洗練された産業構造を持っています。既存の産業基盤と新しいイノベーションを適切につなぐことができれば、そのアップサイドは非常に大きい。

第三の強みは、UMITO Partnersとの対話を通じて私自身が深く学んだ点です。日本には、海に関する圧倒的な知の蓄積がある。その知識は大学や研究機関だけに存在しているのではなく、何世代にもわたって海と共に生きてきた漁業者や沿岸コミュニティの中に確かに息づいています——魚の行動パターン、漁場の特性、季節ごとの海の変化など、長年の実践から体得された知恵です。この文化的・経験的な知識がもっと解き放たれれば、まったく新しい海洋イノベーションの形が生まれる可能性があります。

村上: 一方で、SIIFの雲さんとの対談でも話したように、日本の海洋スタートアップが成長の壁にぶつかりやすい構造的な課題もあります。だからこそBFFは、日本のスタートアップが海外に進出できるようにサポートし、逆に海外の優秀な企業を日本に誘致するハブにもなれると考えています。

サガール: それをどう実現していくのか。鍵となるのは、東と西を結び直すことです。従来は「ノルウェー産サーモンが日本に輸出される」といった一方向の貿易構造が主流でしたが、そこからアイデア・技術・資源が双方向にシームレスに行き交う関係性へと進化していくことが、私たちの目指す姿です。将来、スウェーデン発の微細藻類由来の栄養補助食品が日本に届いたり、日本の海藻イノベーションがヨーロッパに広がったりする。私たちが築きたいのは、そうした海洋分野のイノベーターが集い、文化・市場・技術革新を横断的につなぐグローバル・エコシステムです。この実現は一足飛びには進まず、段階的なプロセスになるでしょう。しかし、そのハブを形成することで、海の持続可能性の未来そのものを再構築していく——私たちは、そこに大きな可能性を見ています。

村上: アジア太平洋の島嶼国・沿岸国が持つインパクトのスケールは、ほかに類を見ないほど大きい。切迫したニーズがある地域だからこそ、BFFはそこを優先的に位置づけていきます。国境を越えて海洋分野の最良のイノベーションをつなぎ、新たな機会と持続可能なソリューションを生み出す——それが、BFFのミッションだと考えています。


サガール・タントン
Beyond Impact

これまでに2つのファンド設立に携わる。1つは、グローバル·インパクト投資機関Gray Matters Capitalが、2017年にインドで立ち上げた教育特化型アーリーステージ投資イニシアチブ〈edLABS〉。もう1つは、オーストラリア政府外務貿易省(DFAT:Department of Foreign Affairs and Trade)が支援する、政府開発援助の枠組みを活用した官民連携型の投資スキームとして知られるインパクトファンド。これらを通じて、アーリーステージのベンチャー企業18社への投資を主導してきた実績を持つ。
また、代替タンパク質や植物由来食品など食の未来を変革するイノベーションを推進する国際的非営利団体Good Food Instituteのインド支部およびAPAC(アジア太平洋)支部、世界各地で食領域のスタートアップ創出を支援するアクセラレーターFounders Institute Food APAC、そしてオランダ·アムステルダムを拠点にサステナブルファッション分野のイノベーションを牽引するプラットフォームFashion for Goodにて、メンターを務める。
さらに、ジェンダー·レンズ投資(女性のエンパワーメントや男女格差の解消を投資判断の軸に据える投資手法)をグローバルに推進する国際的イニシアチブ〈2X Global Forum〉、および新興国·途上国の女性起業家やジェンダー·スマート·ビジネスへの資金供給拡大を目指す〈2X Ignite〉のアドバイザーとして、ジェンダー·スマート·キャピタルの世界的な拡大にも貢献している。

村上春二
UMITO Partners 代表取締役

サンフランシスコ州立大学にて自然地理学とビジネスを専攻。卒業後は、パタゴニア日本支社での勤務を経て、国際環境NGO Wild Salmon Center日本コーディネーターとしてサケの生態系保護に取り組む。その後、漁業や養殖業の持続可能性向上を支援する国際NGOオーシャン·アウトカムズの設立メンバーとして日本支部長に。2018年に株式会社シーフードレガシーと合併し、取締役副社長·COOに就任。2021年に「ウミとヒトのポジティブな関係をつくる」事業を展開するコンサルティング会社、株式会社UMITO Partnersを設立。

  1. [1]

    マイクロアルジー(Micro Algae:微細藻類): 肉眼では見えないほど小さな藻類の総称。高いタンパク質含有量、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の豊富な供給源として注目されるほか、バイオ燃料・化粧品原料・医薬品原料への応用研究が世界的に進む。日本は海藻食の文化的蓄積があり、この分野でのイノベーションを牽引できる潜在力を持つ。

  2. [2]

    培養シーフード(Cultivated Seafood): 魚・甲殻類・軟体動物などの海洋生物の細胞を採取し、動物を屠殺することなく培養・増殖させることで魚介類の組織を人工的に生産する技術。植物由来シーフードと並ぶ「代替シーフード」の一形態。日本の行政・規制文脈では「細胞性水産食品」が正式名称として使われている。陸上動物に比べ、海洋生物の細胞を安定培養させることは科学的に格段に難しく、研究開発の遅れが資本流入の少なさにもつながっている。

  3. [3]

    代替タンパク質(Alternative Protein): 従来の畜産・漁業による動物性タンパク質に代わる、環境負荷の低い新しいタンパク源の総称。植物性タンパク(大豆・エンドウ等)、精密発酵タンパク、細胞培養肉、昆虫タンパク、藻類タンパクなど多岐にわたる。食料安全保障・気候変動対策・生物多様性保全の観点から、グローバルな投資注目テーマとなっている。

  4. [4]

    精密発酵(Precision Fermentation): 微生物(酵母やバクテリアなど)に特定の遺伝子情報を組み込み、乳タンパク(ホエイ等)・卵白タンパク・コラーゲン・酵素・着色料などを動物不使用で精密に生産する発酵技術。フードテック業界で最も注目を集める技術の一つで、食品・医薬品・化粧品など複数の産業への応用が進む。日本のスタートアップや大手食品メーカーのR&D部門でも代替タンパク質の文脈で注目されている。

  5. [5]

    細胞農業(Cellular Agriculture): 動物から採取した細胞を培養することで、屠殺を伴わずに肉・魚介類・乳・皮革などを生産する技術。培養肉(Cultivated Meat)や培養シーフードが代表的。日本でも「日本細胞農業協会」が設立されるなど、学術・ビジネス双方で認知が広がっている。環境負荷の大幅削減が期待される。

  6. [6]

    分子農業(Molecular Farming): 植物を「工場」として活用し、医薬品の分子や特殊なタンパク質を生産させる農業技術。従来の動物細胞培養に比べてコスト・スケールのメリットが大きく、バイオ医薬品・ニュートリション分野への応用が進む。

  7. [7]

    バイオマテリアル(Biomaterial): 生物由来の原料を用いて製造された機能性素材の総称。石油由来の合成素材や動物由来素材(皮革等)に代わる、生分解性またはバイオベースの代替素材が対象。海藻・菌糸体(マッシュルームマイセリアム)・バクテリアセルロース等を活用した次世代素材開発が世界的に進んでいる。

  8. [8]

    ブルーフード(Blue Food): 海洋・淡水由来の食料全般を指す概念。魚介類・藻類・水産養殖物などを含み、陸上食料(グリーンフード)に対する概念として近年グローバルで使われるようになった。環境負荷が低く栄養価が高いものが多く、持続可能な食料システムの観点から注目が高まっている。BFFではブルーフードを中核投資テーマの一つに位置づけ、代替シーフードや海洋資源由来の食品イノベーションへの投資を想定している。

  9. [9]

    インパクト・ディリューション(Impact Dilution:インパクトの希薄化): インパクト投資の文脈で、投資先企業がM&Aや経営環境の変化によって、当初目指していた社会的・環境的インパクトが薄れてしまう現象を指す。特にエグジット時に、インパクトへの関心が低い買い手に売却されることで生じるリスクが大きい。Beyond Impactでは、インパクト条項を投資契約に組み込むことでこのリスクに対処している。

  10. [10]

    食料システムの環境負荷: Poore & Nemecek(2018, Science)ほか複数の研究に基づく推計。食料セクター由来の温室効果ガス排出は世界全体の約26%、うち動物性タンパク質の生産が約14%を占めるとされる。また、世界の海洋・淡水域における富栄養化の約78%が農業由来の栄養塩流出に起因すると報告されている。

    参考:Poore, J., & Nemecek, T. (2018). “Reducing food’s environmental impacts through producers and consumers.” Science, 360(6392), 987–992. https://doi.org/10.1126/science.aaq0216

  11. [11]

    ニュー・ブルー・エコノミー(New Blue Economy): 従来の「採取型(エクストラクティブ)」な海洋経済——海洋資源を取り出し、負荷を与えることを前提とした経済システム——に代わる、海洋生態系の再生と経済活動を両立させる新しい経済モデルの概念。UMITO PartnersとBeyond Impactがビジョンの核心として掲げる。単なる「持続可能な漁業」を超え、海洋バイオテク・代替タンパク・再生型養殖・ブルーカーボン等を通じた、ポジティブな海洋再生と新たな価値創造を目指す。

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