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2023/03/13

【レポート】2月14日(火)未来に続く『ヒトも海も豊かな漁業』の実現に向けて、「北海道漁青連」所属、20・30代の若手漁師が東京視察 〜ストーリーを持つ水産物を。一大消費地・東京で消費者に求められている情報を知る〜

2月14日(火)に北海道漁協青年部連絡協議会(以下、北海道漁青連)を代表する20代・30代の若手漁師が、都内の“エシカル消費の現場視察”や“サステナブルな漁業に関する意見交換・交流イベント”を実施しました。本企画は、北海道漁業協同組合連合会(北海道ぎょれん)から株式会社UMITO Partnersが依頼を受けて企画し、視察先店舗の協力を得て運営しました。

北海道の水産業が抱える課題と目的:

​​2020年の海面漁業・養殖業(属地統計)の生産は、120万トン(全国生産の約28.7%)、2,027億円(全国生産の約16.7%)で、北海道の水産業は量、金額ともに都道府県別で第1位の生産規模であり、日本の水産業において重要な役割を担っています。また、北海道沿岸域の人口数千人単位の多くの自治体では、漁業を中心に経済が発展してきた歴史的背景もあり、漁業の盛衰が地域の盛衰を左右する事例も少なくありません。しかし、北海道も含め日本の水産資源は長期的な減少傾向にあり、地球規模の海況の変化により魚の動きも変化しています。水産資源を持続させるための取り組みと、漁師という職業が「生業」として持続するための視点が、より一層いま現場の漁師に求められています。

 今回の視察では、一大消費地である東京で消費者が求めている商品や情報を知り、各浜での水産資源の持続と漁師という「生業」の持続を目指した取り組みのきっかけを作ることを目的に、エシカル消費の現場視察とサステナブルな漁業に関する意見交換・交流イベントを企画しました。

■行程:

【第一部 / 視察】
内容:エシカルフードの小売・飲食の現場を視察
場所:4店舗(ビオセボン四谷三丁目店、Food&Company代官山T-Site店、d47食堂、エシカルコンビニ ITOCHU SDGs STUDIO)

【第二部 / 意見交換・交流会】
内容:若手漁師の自慢の水産物をシェフが調理。 関東や西日本の漁業・水産流通・飲食店関係者を招待し、北海道漁青連メンバーと互いに意見交換。
場所:The Blind Donkey 

■第一部 小売・飲食店視察

○ビオセボン四谷三丁目店
ビオセボン・ジャポン株式会社・商品部の小池遼太氏から、同社の理念や販売商品の調達方針についてご説明いただいた後、売り場を見学しました。同社はフランス・パリ発のオーガニックスーパーマーケットで、東京・神奈川に27店舗とオンラインストアを展開しています。「オーガニックを日常に」をテーマに、ふだんの食事にオーガニックを気軽に取り入れられる暮らしを提案しています。環境・社会への配慮がされた商品を求めて来店する利用者も多く、商品の製造過程やこだわりなどの情報が求められています。オーガニックの定義や、必要性が広く理解されている農産物と比較して、海産物については生産者からの情報提供、お客様の認知拡大の双方に伸びしろがあるのではないかと話されていました。どのような漁業がサステナブルなのか、生産者の取り組みや生産に至るまでの背景を伝えることで市場価値を高める可能性を感じられた視察となりました。参加者からは「資源を考えることの重要性と生産者のストーリーを伝えていくことの重要性を感じた」という感想が聞かれました。

      売り場を視察する参加者

水産物の売り場には国際認証についてのポップが掲載されている

○Food&Company代官山T-Site店

 Food&Company代表取締役の白冰氏、コミュニケーションディレクターの盛岡絢子氏から店舗の理念や販売商品の調達方針等について説明を受けた後、売り場を見学しました。同店は、「優しい経済」の実現を目指し、生産者の想いやストーリー性を大切に、数キロ単位の少ロットからでも仕入れを行っており、小規模漁業を営む多くの参加者にとってもイメージがしやすい視察となりました。店頭で生産者の想いや、商品に込められたストーリーは、消費者の感情に直接働きかけ、他の商品との差別化につながること、そして店舗側も生産者からの積極的な発信を求めていることが説明されました。生産者側からの情報発信の一例として、日々の生産の様子や生産者の生活が見える内容は、消費者が生産地を身近に感じることができる方法として紹介されました。また、同店では、生産者が直接消費者と交流するイベントも開催しているとのことで、今後水産物でもそうした取り組みを増やしていきたいとのことです。視察参加者からは「生産者が持つ情報を伝えることがファンを増やし、購買意欲に繋げることができるということを実感した」という感想が聞かれました。

  代表取締役の白冰氏から説明をうける参加者 

                       昆布の売り場を見学

○d47食堂

 d47食堂を運営するディアンドデパートメント株式会社ディレクターの相馬夕輝氏から店舗の理念や取り組みについて説明を受けた後、昼食をとりました。d47食堂では、食を通して47都道府県の地域文化や気候風土を伝えることを目指し、メニューや店づくりに取り組んでいます。視察参加者は、UMITO Partnersが国際エコラベル認証取得に向けてプロジェクト支援を行なった岡山県の邑久カキを用い、調理するうえでもおいしく、さらにサステナブルな工夫がされた定食や、生産現場の様子や生産者のメッセージを盛り込んだメニュー表に驚きの声をあげていました。参加者からは「来店客にストーリーが伝わる工夫が随所にあり、そこに価値を感じるお客さんが多いことを感じた」、「食材同士の繋がりを踏まえて考えていくことが生産者にも求められている」などの感想が聞かれました。

                       d47食堂での集合写真

               邑久カキのカキフライ、牡蠣めし
牡蠣殻を肥料した米と岡山産の海苔も使用されている

○エシカルコンビニ ITOCHU SDGs STUDIO

エシカルコンビニ ITOCHU SDGs STUDIOの運営を担当するGENERATION TIME株式会社ディレクター丹地良子氏、HRマネージャー髙橋雅子氏から店舗の理念をご説明をいただいた後、売り場を見学しました。エシカルコンビニ ITOCHU SDGs STUDIOでは環境や社会に配慮したエシカルな商品を販売し、来場者が商品を実際に試したり、スタッフからの説明を受けることで体験を通じてエシカルな商品の価値を理解してもらうことを目的としています。参加者は興味深げに売り場を見学しており、プラスチックゴミを再利用した商品を購入した参加者からは「ゴミ問題は、地元の海でも大きな問題となっています。廃棄されるものから生まれる商品を使用することは、行動と視野を変えるきっかけとなる。自分の子供が使うことで、地元の次世代にも広く伝えていきたい」という感想が聞かれました。

運営担当の丹地氏、髙橋氏から説明を受ける参加者

スタッフから説明を受けながら売り場視察

■第二部 意見交換・交流会

 第二部は、「地球を守りながら、自然とともにあるレストラン」を掲げるthe Blind Donkey Tokyoを貸し切り、視察協力店舗関係者やサステナブルな漁業を推進する関係者(漁業者、飲食・小売・流通業関係者等)を招待して開催。前半はパネルディスカッション、後半は北海道と東京湾の海産物を試食をしながらの交流会を行った。

 パネルディスカッションは、「生産者のストーリーの伝え方」をテーマに、弊社代表の村上をモデレーターとして、千葉県船橋市で「100年続く」ことを目指して持続可能な漁業を営む海光物産株式会社代表取締役社長 大野和彦氏、元水産庁職員という肩書を持つ魚屋、築地中原水産代表 中原立喜氏、生産者との関わりを大切にする the Blind Donkey Tokyo オーナー兼シェフのJerome Waag氏、PRの専門会社である株式会社Worg代表の市川千尋氏の4名が参加し、北海道漁青連のメンバーや、ゲストとの意見交換も交えて行われた。大野氏からは「資源を持続させるためには、しっかりした資源量評価、そして漁業者側の工夫が必要。未来に目を向けてほしい」という資源を持続的に利用していくことの大切さが説かれ、中原氏からは「素材を生かして加工できることが、魚屋の強みだと思っている。生産者の意見を反映しながら加工することができれば」と魚屋が生産者と料理人の間に立つメリットが語られました。Jerome氏からは「料理の半分は料理人がつくるが、半分は生産者がつくっている。素材の良さを感じてもらうように調理することで、料理からもストーリーが伝わると考えている」と、生産者と料理人が協力して伝えるストーリーの大切さ、市川氏からは「伝えたい相手を明確に定め、伝えたい内容、伝え方の順番に考えることが大事」というストーリーを伝える手法が示されました。参加者からは、「他地域のブランドに負けないアピール方法を考えていきたい」という声や、「資源管理する努力が消費者に響くストーリーになるかもしれない。実際に小さい魚を漁獲しないように網目の大きさを決めている」など各地域の漁業を具体的にイメージしたさまざまな意見が上がりました。

 交流会では北海道漁青連より、小笠原宏一副会長(北るもい漁協所属)の水ダコ、横田和馬副会長(根室漁協所属)の活ホタテ、山﨑賢治理事(浜中漁協所属)の葉に厚みのあるアツバコンブと葉の長いナガコンブ、大野氏からは海光物産株式会社のスズキを活〆(放血)・神経抜き処理した瞬〆スズキを使用し、the Blind Donkey Tokyoがこの日のために考案した料理が提供され、漁業者、小売・飲食・流通業関係者、料理人を交えた交流を行いました。参加者は、各地域の漁業の課題や、今後の取り組みの可能性などについて議論しながら、交流を行いました。

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